Mergers and Acquisitions update February 2019
Originally published by NNA (https://europe.nna.jp/)
ブレグジットを巡るどたばたや先行き不透明感にもかかわらず、M&A(企業の
合 併·買収)市場は動き続けている。私自身もこのところ、買収や事業再編、銀行との交渉などさまざまな依頼を受けている。
■口約束を巡る紛・
紛争処理部門の同僚がこのほど、法的効力を持つ口頭での契約について興味深い解説をしたので紹介する。これは、英最高裁判所での判例(ウェルズ対デバニ、2019年、UKSC4)を受けたもので、最終契約の締結に至るまでに多様な取引上の議論が行われるM&A分野にも深い関連性を持つ。
契約当事者は多大な負担をもたらす訴訟沙汰を避けるため、法的拘束力のある契約書の中であらゆる重要条件について明白に合意しておく必要がある。しかし何らかの重要条件が欠けていても、当事者らが明らかに合意に拘束される意図を持ち、これを履行するつもりだった場合、裁判所は法的効力を持つ合意があったと見なしたがるだろう。「ウェルズ対デバニ」でもそうだった。
事例:ウェルズ氏はマンションを建設したが、なかなか買い手がつかなかった。 隣人にこれを話したところ、この隣人は同氏にデバニ氏を紹介した。ウェルズ氏とデバニ氏は電話で話し、デバニ氏は自分が不動産業者で、取引額の2%とVA T(付加価値税)を手数料として請求すると説明した。ただ、どのような状況で手数料が発生するかについての話し合いはなかった。その後、デバニ氏がウェルズ氏に紹介した買い手がマンションを購入したが、ウェルズ氏はデバニ氏に手数料を支払うことを拒否したため、デバニ氏が裁判を起こした。
- 審では、デバニ氏が支払条件を暗示していたと見みなされ、同氏が勝訴した。
- 方、控訴審では、「交渉が未完結」だったため、支払条件を暗示するような法
効力のある契約はなかったと見なされ、ウェルズ氏が勝訴した。
■最高裁判所は口頭の契約と判・
判断が分かれた下級審に続き、最高裁判所が示した見解とその考察は以下の通り。
- 法的効力のある契約が存在するかどうかが争点となった。当事者らが契約に拘束される意図を持ち、合意に基く行動を取ったと判断される場合、裁判所はその合意が曖昧または不明確すぎて法的効力を持たなかったとは見なしたがらない。
- ウェルズ氏とデバニ氏の発言と行動は、こうした意図の存在を示すに足る明白なものだった。
- よくある単純な契約では、交渉の重要条件について、言葉の用いられた文脈や契約が結ばれた時の当事者らの行動の方が、言葉自体と同様あるいはそれ以上に多くを物語る。ウェルズ氏とデバニ氏の合意もこうした契約に当たる。
- · 一審から三審でそれぞれ異なる判決が下されたことは、書面上の契約がない場
合 には特に、契約の成り立ちや暗示される条件を巡る審査が困難となることを表している。契約当事者はあらゆる重要条件について、法的拘束力を持つ契約
書 の中で合意しておく必要がある。
2月の注目すべき取引を以下に・げる。
- 東京電力フュエル&パワーと中部電力の合弁会社で火力発電事業の燃料調達などを手掛けるJERA(ジェラ)と東京電力パワーグリッドは、英国の蓄電池事業者ゼノベ·エナジー(Zenobe Energy)に共同出資することで合意した。蓄電池は
- 電気自動車(EV)と並び、M&Aが活発な分野だ(下記も参照)。
- lルノー·日産自動車·三菱自動車連合のベンチャーキャピタル(VC)·ファンド「アライアンス·ベンチャーズ(Alliance Ventures)」は、EV向け充電プラットフォームを手掛ける中国の新興企業パワーシェアに出資した。
- ソフトバンク·グループは、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系投資会社ムバダラ·インベストメントの欧州テクノロジー企業を対象とした投資ファンドに2億ドルを出資した。
剣道面では、5月にセルビアの首都ベオグラードで開かれる欧州選手権大会に出場する英国代表チームのメンバーを間もなく発表する。チームの世代交代が進み、若手の選手が台頭するのを見るのは新鮮だ。今後もこの流れが続いてほしい。
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